* 青猫 *

突然、k作が東京から訪ねてきた。
深夜バスで来るというので朝早くに伊勢の駅前まで車で迎えにいく。
うちで少し休み、まずは伊勢神宮に行く。

k作は少し疲れてるみたいだったが表情はすっきりしておだやかだった。

 

話しがあるから、静かな所に行きたいというので
内宮の近くのお茶屋を案内する。

お茶を一口飲むとk作が口を開いた。

に入ろうかとおもってる。」

その事を聞いてもぼくは不思議と驚かなかった。
最初に顔を合わせた時から何か感じるものがあったから・・・・

   サカナ「青猫になるのか?」
    k作「あー」
   サカナ「誰でもなれるわけじゃない・・」
    k作「知ってる」

      k作はぶっきらぼうにそう言うと見るともなしに天井のランプに目をやった。

    サカナ「もしなれたとしても・・それまでの記憶をうしなっちゃうんだぞ」
    k作「・・・・・・・」
      ぼくらは押し黙ったまま お茶とおかしを食べた。

      どれぐらい時間がたったのか・・・・

      この部屋ではやけにゆるやかに時間が進む。
      やがて、k作が独り言のようにつぶやいた。
      「相談にきたわけじゃない。」

その言葉は少しの間、蝶々の形でその部屋を漂っていたが
その後、静かに壁に吸収された。


先にいた客はいつのまにか帰り、その部屋はやけにひっそりしていた。
かすかに花の香りがしたがぼくにはなんの花か分からなかった。

   k作「青猫になれたら森に畑をつくる、それから木の家具を作りたいんだ。
     食料の買い出しとか、作った家具を現金に替えるため時々町にも出る。」
  サカナ「決めたんだな」

   k作「あー」
  サカナ「青猫になれたら、又遊び来いよ。」
  k作「知ってるだろう、青猫になったらおまえのことは忘れちゃうよ。」

  サカナ「そうだったな・・・。」

 

その日k作はうちに泊まった。
次ぎの日は工房の前の海で泳ぎ、夜になると
来たときの同じように深夜バスで東京に帰っていった。

最近、青猫になりたくて森に入る者が前よりずっと増えたらしい。
けれど実際なれるのは一握りだ。

k作青猫になれるんだろうか・・・・?

さよなら、K作。
ぼくは、おまえが青猫になっても分かると思うよ。

モドル   ススム